ワイヤーハーネスに関する今後の技術動向とは
アルミハーネス
自動車に搭載されるワイヤーハーネスの回路数や重量は様々な機能の追加により年々増加しており、燃費向上のためにワイヤーハーネスの軽量化が切望されています。ワイヤーハーネスの軽量化で注目を浴びているが銅電線の代わりにアルミ電線を使用する技術です。アルミは銅に比べて軽量ですが、導電率と引張強さが低く、電食腐食が起こりやすい特徴があります。また、空気に触れると絶縁性酸性被膜を形成するため加工性に問題があります。なお、遮蔽シールドも銅製が一般的でしたが、軽量化を目的にアルミ製が開発されています。
導電率や引張強さの低さの問題に関してはアルミにFeやMgなどの元素を添加し、合金化することにって物性の改善が進められています。
アルミは活性が高く他金属と電解液によって接していると電食腐食を起こしやすい問題に関しては、端子加工後のなどアルミ電線が外部と接触し露出している部分にモールド保護をおこなうなど水分との接触を妨げる技術が開発されています。
絶縁性酸性被膜を形成するため加工性の問題に関しては、アルミ電線と接触する圧着端子表面に小さな溝や突起を付けることによって、圧着時に酸化被膜を破壊する技術が開発されています。
高電圧ハーネス
二酸化炭素の削減のためHybrid Electric Vehicle(HEV)、Electric Vehicle(EV)が普及し高電圧ハーネスシステムの開発が進んでいます。高電圧ワイヤーハーネスの技術課題として電磁波遮蔽と高耐熱性が挙げられます。電気自動車に用いられる走行用のモータを駆動するためには大きな電流が必要となりますが、大きな電流がワイヤーハーネスを流れると強い電磁波が発生します。強い電磁波は周辺の電子機器や計器に悪影響を及ぼすため、遮蔽シールドにより電磁波の影響を抑制する必要があります。遮蔽シールドや被覆の素材・構造を研究し電磁波遮蔽効果が高く耐熱性も高い電線が開発されています。また、高電圧の電線に対応したコネクタも開発されています。
ワイヤレス化
ワイヤーハーネスの軽量化を実現するためにワイヤーハーネスの部分的なワイヤレス化への期待が高まっています。ワイヤーハーネスが持つ機能をワイヤレスセンサネットワーク(WSN)に代替する研究が進められていますが、多重波伝送によるフェージング(受信電力の変動)やプロトコルの問題など解決すべき課題が多いのが現状です。